印象

 そうか、そんなものかと言うのが印象だ。個人ではなく、全体で捉えるとその程度のものかと、印象との乖離に気づかされる。
 厚生労働省の2015年の簡易生命表から算出すると、ガンがなくなっても日本人の平均余命は約3年しか延びないらしい。男性で3.78年、女性で2.29年の延び程度しかないらしい。死因の2位の心疾患で死ななくなっても男性で1.44年、女性で1.37年らしい。脳血管疾患を含めた15年当時の三大疾患全てが無くなったとしても男性で7.1年、女性で5.88年延びるだけらしい。
 製薬会社がくれた資料に載っていたものだが、「・・・だけ」と言う表現から、寿命がそれだけ延びても仕方がないというようなニュアンスが透けて見える。僕もそう思う。ある説によると、人間の骨格は50年くらいしか設計されてないらしいから、寿命が延びれば延びるほど痛みと不自由の時間が延びることになる。吉本隆明が、老化とは若いときの何倍も時間をかけて同じことをすると言うようなことを言っていたが、正にそれが実感できるようになった僕は、ひたすら長い時間を与えられることが幸せだとは全然思わなくなった。生産より消費のほうに軸足を移したら、社会的な存在理由も希薄になる。やはり、与えられるよりは与えるほうが心地よい。
 少年時代や青年時代が延びるなら、学ぶことに数年も多く時間を与えられるから好都合だ。人より多く時間をかければ僕でももう少し上のレベルまで達することが出来たかもしれない。人生の終焉で7年も時間を与えられて何に使うのだろう。セッティングされた遺伝子に抗うことは恐らくかなりの苦痛を伴うと思う。待ち受けているものが希望だとは思えない。