禁句

 「施設に入れればいいが!」の声掛けが救いになる人もいれば、逆のこともある。この女性の場合、圧倒的少数の後者にあたる。
 「お母さんの調子、どう?」と尋ねると、「ちょっとは進んどるかな~」と答えた。もう何年も1週間ごとにお母さんの痴呆の漢方薬を取りに来るからほとんど儀礼的な挨拶だが、何年たっても「ちょっとは」と言う枕詞が使われる。面倒で儀礼的な挨拶で済ませているわけではなく、特には急な病気で漢方薬を作ったりするから、「ちょっと」は言わば適格な表現なのだ。
 何年間もの「ちょっと」を重ねれば、「ずいぶん」症状が進んでいることになるが、しかし本当にちょっとなのだ。なんでこんなにゆっくりしか進まないのだろうと僕も薬を作りながら不思議に思う。調剤薬局でもある僕の薬局では、痴呆の処方箋を取りに来る家族もおられるが、全員この女性のお母さんを追い抜いていく。
 このお嬢さんは断固自分で介護すると決めている人で、施設は禁句だ。ある時話をしていてその覚悟がこちらに伝わってきたから、以来絶対に口に出さないようにしている。自分は働きながら、出かける前も、帰宅してからも世話をしている。勿論深夜も。
 僕が1週間分しか漢方薬を作らないのは、1週間に一度やって来てもらい、ササヘルスを薄めたお茶もどきで、ティータイムを楽しんでいただくためだ。僅か10分くらいの雑談にどれだけ価値があり、どれだけ貢献できているかは分からない。
 「6年間、このくらいで済んでいるのは不思議じゃなあ」と言うとその女性も同意したから「優しい自分(あなた)のお陰か、僕の漢方薬のお陰かじゃあ!」と言うと、「先生の漢方薬のお陰じゃわ!」と言ってくれた。だけど僕には99%お嬢さんの力だと分かったいる。だから彼女に言ってあげた「そのとおりじゃあ!」

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