幸せ

 男性でこんなに優しく父親と接する人を見たことがない。多くは敵対関係に見える。息子と父親などそういったものだ。
 もうずいぶん前に僕の薬局を利用してくれていた方だ。20年は経っているから面影が辛うじてあるくらいだが、さすがに95歳ともなると、面影も残しにくい。ただ問診を勧めていくうちに、記憶がよみがえってきて、最終的にはお互い懐かしんだ。
 主訴はちょっと変わっていて、頭が熱くてイライラすると言うものだ。こんな不思議な不快感に現代医学は薬を用意していない。だから先生も困っているとは思うが、漢方薬は工夫すれば何とかお役に立てれる可能性がある。御本人の希望か息子さんの機転か分からないが、どうやらお役に立てれそうだ。
 僕の問診時も、単なる雑談の時も息子さんは傍らに位置し、とても優しくお父さんに話しかける。娘の場合こうした光景はよく見るが、息子がここまで優しいのは見たことがない。何がそこまでにしたのだろうかと答えを知りたいものだ。95歳にしてはかなり自立できていると思うが、やはり補助は必要だ。それを面倒がらずにゆっくりと時間を勧めながら、意に沿ってあげている。
 こうした関係は親が幸せなのか、子が幸せなのかは分からない。ただ、眺めていると親も子も幸せそうだ。

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