前提

 「毎日元気で過ごさせていただいています」とあらためて言われてもピンとこなかった。何せもう10年以上、隔月にやって来ては2か月分ずつ漢方薬を持って帰る。元々お世話をし始めた頃も元気だったし、途中で癌が発覚してもそんなに体力を落としたようには見えなかったから、僕のイメージではずっと元気なのだ。
 お会いした時から見かけもそんなに変わらなくて、相変わらず経営している果樹園をご主人と切り盛りしている。だから僕はたいして、その方に関しては心配していなかった。と言うより安心してみておれる。
 もともとの肝臓疾患も、がんも治ったのかと思わせるほど快調で、誤診でないのと尋ねてみたいくらいだ。御本人の心の中は覗けないが、僕はほぼ誤診だろうと言うくらいの勢いでその方の元気を受け止めている。
 今日冒頭の様な挨拶をしてくださったのだが、それに答えた自身の言葉に我ながら驚いた。「お互い、元気でいたいですね」だったからだ。職業柄朝から晩まで「お大事に!」を繰り返すが、今日に限って自分の健康も会話の中

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に入れたのだ。理由は分からない。ただなんとなく、その方の元気さにあやかりたいと思ったのではないか。
 病気は治るもの。歳を重ねて、そんな前提が成立しなくなったからかな。