遠慮

https://www.youtube.com/watch?v=zKSLO53YDIs

 僕の薬局はいわゆる病院の前にあって、処方箋を回していただく薬局ではない。だから少しは批判的な見解を述べることができる。ただし医師との力関係で多大な遠慮もしている。
 そんな薬局にも処方箋をわざわざ回してくださる先生がいて、娘夫婦がお手伝いをしている。
 数日前、娘が特老の回診から帰ってきて、ある入居者の皮膚病について先生から任されたと言った。娘も任されたことに責任を感じたのだろう、僕に意見を求めてきた。体のある部分が結構広範囲に黒くなっているそうだ。幸い患部を写真で撮ってきてくれていたので、僕も目で確かめることができた。お医者さんはステロイドを使って対処されているようだが、ますます悪化しているらしい。
 お医者さん公認で薬を選択していいのだから、こんなにありがたいことはない。腕の見せ所だが、僕はスマフォでとられた写真を見てすぐに壊死だとわかった。特老に入っている人が壊死を起こしていると言うのは、灯台下暗しで先生も気が付かなかったのかどうかわからないが、それ以外の選択肢は僕にはなかった。
 娘に助言して、先生の許可を得てから抗生物質の塗薬を特老に届けた。
 僕はこのことを忘れていたが、1週間後、回診に同行した後、娘が教えてくれた。「きれいになっていた」と。
 たかが薬剤師でも、こうして相談してくれれば100回に1回くらいはストライクが取れることもある。40年も、体調不良の方を毎日お相手してきたから、雑草のような知恵もつく。
 50年前、顔が悪くて医学部を落ちたが、考えてみれば医療のニッチの部分を細々と歩み続けたものだ。