心残り

 漢方薬を前回初めて郵送した女性が今日薬を直接取りに来た。途中経過のメールで直接薬局に来てみたいと書いてあったが、僕の頭からは消えていた。県内の方で、車で40分くらいで来れる距離だ。
 僕は「来たらがっかりするから、来ない方がいい」と言ったはずだが(記憶にはないが僕は100%そう言う)来てしまった。
 さて、症状の方は2週間で8割方改善していて便秘下痢も繰り返さないし、お腹や肛門で音がするのも気にならなくなった。もう止め方まで話は進んだが、果たして田舎の薬局を実際見てどう思ったか。
 「まだ、電気が通じていないと思ったんじゃないの?」「怖いようなつり橋を渡らないとだめだと思ったんじゃないの?」と言うと、この辺りにおじさんが住まわっていて、昔遊びに来ていたらしい。魚も野菜もありで、豊かなところだと認識していたらしい。固くも無く、かといって品も失わず、おそらく社会で活躍されているだろう女性の日常の生活の質を高めることに貢献できてうれしかった。
 ほとんどの方が、メールに残る語句が僕にとっての人物像であり、電話での話しぶりが人物像なのだが、こうして文字から実物に血が通うと、やりがいを喚起される。しんどい日が続いて、対応できる限度を超えていたが、鍼の先生や応援の薬剤師や家族に支えられ、復調を感じられるようになったから、復帰のタイミングを計っているが、今日の女性に背中を大きく押されたことは確かだ。
 今日の女性とのやり取りで一つだけ心残りがある。もう一つ言っておくべきだった。「侍が刀を差してまだ町中を歩いていると思ったんじゃろう」