助言

 畑違いなのに、助言してきたらしい。取りようによっては苦言に聞こえたかもしれないが、息子は本気で心配してあげたみたいだ。話しぶりで分かる。  薬局から歩いて5分くらいの海岸に10日くらい前にイタリアンのレストランがオープンした。僕の散歩コースだから改装を始めた半年くらい前からずっと気になっていた。早速食べに行った人たちに、流行っているかどうかを尋ねた。日中はまずまずだが、夜はお客さんが少なくてそのことを店のオーナーが嘆いていたと聞いた。昨夜息子が後輩と食べに?飲みに?行ったらしい。その報告を今朝の食事中に聞いた。  料理に対する評価がよかったから、夜の営業を隔日と言うのは残念だ。そもそも宣伝はチラシが一度新聞に入っただけだから、店の存在が余り周知されていないと思う。その段階での見極めは早すぎる。折角関西のほうから来て牛窓に店を開いたのだから、長く繁盛して欲しい。息子の話を聞きながら妻が「お父さん、田舎でつぶれない秘訣を伝授してあげたら」と言った。なるほどそれは名案だ。何気なく食べに行って、それとなく伝えようかとその気になった。立派に改築して、スタッフも充実していて、むしろ僕のほうが指導して欲しいくらいだが、つぶれない方法だけは僕のほうが上だろう。なぜなら、金魚の糞みたいな医院の門前薬局にならずにつぶれていない薬局は、今ではかなり珍しいから。40年近い実績だけは負けない。いやいや父の代から言えばもう70年近くつぶれないのだから、恐ろしいものがある。ほとんど不気味な世界だ。足がないのか、地に足が着いていないかのどちらかだ。  参考までに、息子に何を食べたのと尋ねたら、パスタとピザと答えた。「じゃあご飯はないの?」と尋ねると「それがご飯じゃあ」とむっとして言った。僕は今までパスタもピザもご飯のおかずだと思っていた。どおりでお腹が膨れて食後は苦しいと思った。ところで、パスタとスパゲッティーって違うの?