効能

 頭がちょっと違うだけで、その東大病院の先生と僕は似ているのかもしれない。新聞の投稿を読んだだけで何の根拠もないが、投稿の内容からして年齢が恐らく近いこと、そしてひょっとしたら、薬局の息子だったのではないかと思ったのだ。
 日々数十人の患者さんを診なければならないらしいが、途中でしんどくなってしまうそうだ。自分の体が昼の休憩までもつのかなと心配になるのだそうだ。そんなときに重宝して確実に午前の診療を完遂できる武器としてドリンク剤を愛用しているみたいだ。名前を書いてくれていれば僕とどこまで似ているか分かるのだが、さすがに商品名は書いていなかった。というのは僕はリポビタン派だからだ。なんとなくそこまで一致しているように思えて仕方ないのだ。
 なぜなら僕は中学生からリポビタンを愛用していて、ほとんどドーピングしまくりだった。頭の働きをハイにしててんぱらせていただけで、能力的には大したことはない。東大の先生はおそらく元から脳の機能がよいのだろうが、僕の脳は幼い時からほとんど「昨日」だった。
 ただ、東大の先生が全国紙でドリンク剤の効能を認めてくれたのは珍しいことで、何か自分の青春期を認められたようで少しうれしかった。お医者さんがドラッグストアにリポビタンを買いに行く姿は、想像しただけで絵になる。OTCを馬鹿にするのではなく、「いいものはいい」でいいのではないか。権威を常に身にまとっていては重たくて仕方ないだろう。何しろ権威と言うものは返って身を縛り身動きできなくなるくらい重いらしいから。