支え

 寺々を回るたびに、あなたは深く頭を下げ、両手を合わせベトナム風に何度も上下に動かし拝んでいた。後ろ姿の貴女からは、何を祈っているか十分伝わってくる。僕には手に取るようにわかるのだ。その理由は貴女を幾か所の観光地に連れて行ったときに必ず手に取る子供へのプレゼント。そして今日僕が半年分もの頸椎ヘルニアの漢方薬をご主人のために作ったこと。
 一緒に働いている女性たちと比べると少しお姉さん的な貴女は、いつも遠慮気味で、自撮りだった。それに気が付いてから、僕はカメラマンをかって出ることにしたが、シャッターを押すだけなのに、とても喜んでくれ、その都度礼を言ってくれる。
 僕は誰も落ちこぼれることなく同等に楽しんでほしい。と言う僕も今日は、もう何度も訪ねた尾道の街をとても楽しめた。もちろん圧倒的に観光客が少なく、いつもより二つくらい新しい寺を経験できたこともあるが、昨日までの懸案だった、1週間溜まっていた新しい漢方相談の方全員に返事を出すことができ処方も決めれたからだ。区切りがついて、自分へのご褒美と、出歩けないストレスを発散させる意図がまんまと達成されたからだ。
 目の前にいる人の笑顔、見えないけれどつかの間の関係が築かれる方々の期待。所詮僕など見えもしないミクロの世界でしかないけれど、それでも「世のため人のため」が大きな支えになってくれる。