先輩

 1年後と指示されていたので、今日、胃カメラを飲んできた。よかったのか悪かったのかわからないが、1年後の胃カメラの予定表をもらって帰ってきた。もう1年は大丈夫と言うことなのだろうか。
 いったいいつまでこのようなことをするのだろう。そして一体いつ頃、大病院に回されお腹を切られるのだろう。その時点で僕は仕事を辞めるだろう。そういったことがない限り、だらだらと続けて、若いものに嫌われて、破れた雑巾のように汚がられてゴミの集積場に捨てられる。
 胃カメラを飲む前の時間、胃カメラを飲んでから安静にしている時間、いろいろな感情が脳裏に浮かぶが、そういった心の奥の感情のほとんどを、誰にも口にしてこなかったことに気が付いた。果たして誰に言えるのだろう。心の底に沈殿している感情を水面まで浮かび上がらせて、言葉にして口から出すことができる相手がいるのだろうか。
 その相手は家族ではないと思う。家族などというものは残酷なものだ。傷つけあいながら生きている。完全に断ち切れないから血のつながりが往々にして破壊的に働く。
 いつか時間を取って、二人の先輩に会いに行ってみたいと思った。卒業して40年以上そんな感情は沸いては来なかったが、あの二人以外、100%僕をさらけ出すことはできないだろう。そして、必ずしも良い人生ではなかったと告げて別れたい。