夢物語

 何が今日の広島旅行でよかったと言えば、原爆ドームから宮島までの船だろう。かつて何度も原爆ドーム見学後に宮島に行ったのだが、路面電車で広島駅まで戻り、そこから山陽本線で宮島口まで行くのがなんとなく時間の無駄のように思っていた。そこで目にしていてもそんなに興味を持たなかった原爆ドームの橋の下に桟橋がある遊覧船みたいなものを調べてみた。すると、原爆ドームから宮島までの渡し舟だと分かった。値段は高いが、1時間かけて毎度おなじみの光景を見ながら移動することを思えば、川を、そして海を船で走るのは趣が違って楽しいだろうと容易に想像できた。まして船好きの僕だからなおさらだ。そこで今日初挑戦してみた。
 瀬戸内海の風景は、牛窓や宇野高松と変わりはない。ところが僕をして大きな声を出して喜ばせたのは、船のスピードだ。定員は50人くらいだろうか、ただ詰め込むようなつくりではないから、各人に海に向かって腰掛がある。窓越しに海を見ることができるのだが、船が結構細長くて、魚で言うとサヨリみたいに見える。いかにも抵抗が少なく作られているように見えるが、実際に走り出したときのスピードが半端ではなかった。特に川を下るときは、特別デッキに出ることが出来るのだが、スクリューで作られる波がまるでモーターボートによって作られる物と同じだった。水上スキーでもできそうなスピードだった。僕だけではなく同行したベトナム人も、身振り手振りで親しくなった外国人夫婦もとても喜んでいた。
 こんな船が活躍できる観光の売りがあればいいのになあと、わが牛窓町について考えていた。これだけ需要を作り出すとさすがに採算は合うだろうが、船は極端に高いから黒字を出すのは難しいだろう。残された僕自身の時間もないし、経済的な余裕もないから単なるい夢物語だが、