民度

 僕が「ここには住めない」と思う理由は一杯あるが。簡単にその町の品性を判断できる方法がある。それはゴミだ。ゴミの出し方ですぐに分かる。例えば何度も都市部で目撃したが、僕が訪ねる勉強会の日だから日曜日だが、土曜の夜の宴の残骸が路地裏に無造作に出されているのなど論外で、その道を通る気にもならないが、ゴミの集積所にゴミ袋を出す方法で民度が手にとるように分かる。  例えば僕の町、特に僕の部落。10数軒でひとつの単位を作っているのだが、ゴミの集積ボックスに出されるゴミ袋は、ほとんどの場合奥から奥から並べられる。引き戸を引いて目の前に置けば簡単だが、一番奥に置くために入っていかなければならないが、誰一人それを面倒だと考えている人はいないみたいだ。90を回り、ゴミステーションまでやってくるのが大変になった人が、時に一番手前に置いたりするが、それは仕方ない。その人だって、足腰が強いときは丁寧に一番奥においていたのだから。  嘗て、東京に住んでいた人が田舎に引っ越したくて色んな町を物色して、牛窓に決めた理由を教えてくれたことがある。その方は、牛窓の家々に巣を作っているツバメがとても大切に扱われていることに気がついて牛窓移住を決めたらしい。人にはそれぞれこだわりがあり、許せないものは目に付きやすいが、感動を呼び起こされるようなものにはなかなか会えない。日常の何気ない風景の中に一大決心を誘発するようなものが隠れている。往々にして、それらは失ってはいけないものたちで、それが無ければ、こだわりも愛着も皆失ってしまう。二度と通りたくないと思ったあの街と同じだ。、