手八丁口八丁

 「ほう、こう言うからくりだったのか、よく分かった」  今日ある郵便物が届いた。透明のセロファンに入れられたものだからよく見える。赤い大きな字で「漢方薬局と出会える本」と書かれていた。漢方薬局と言う字を見て興味を示さないことはありえない。早速中身を出して目を通した。すると、「安心して相談できる薬局20店舗を厳選紹介」する本の出版企画の案内だということが分かった。何でも、20軒くらいの自称漢方薬局を募って、一軒あたり8ページをあてがわれ、本を出すのだそうだ。掲載費用は35万円。また別口として1軒単独で本を出すことも出来る。いわば漢方薬局の自費出版だ。192ページで定価1300円の本を4000部作ってくれるそうだ。勿論プロのライターが作り原稿を作ってくれるそうだ。しめて費用は350万円。本と言う名の宣伝だ。  そして次のように今までの実績を紹介していた。今までに2300書を発行して来たらしいが、著者?からの喜びの声を伝えている。例えば「お客さんが30倍になりました」「テレビ局から出演依頼が来ました」「セミナーの依頼が増えて講演料も上がりました」「お客様から先生と呼ばれるようになりました」「いい人材が集まるリクルート効果がありました」「大手版元の依頼で2冊目が印税契約で決まりました」  なるほどこれは蜜の味だ。有名になり、経済もそれこそ桁違いになり、自尊心はくすぐられどうしだ。ただこれはアホノミクスの答弁やカス官房長官の答弁や佐川急便国税庁腸管の答弁と同じく超胡散臭い。信用できないことの最早代名詞と化しているあいつらと同じ次元だ。仮に本当だとしても僕の薬局ごときが手を出すものではない。そもそもお客さんが30倍も来たら僕の薬局は潰れる。対応できるはずもなく、その結果、効かない薬を持ち帰らせることになる。  僕はこの出版社に「行ってはいけない薬局」と言う本を出して欲しい。最近、やたらガードが高い相談の電話が増えた。余程高くて効かない漢方薬と健康食品の組み合わせを手八丁口八丁で買わされたみたいで、薬局とはそんなものと言う認識がヒアリのように増殖しているのではないかと思う。田舎の薬局が、所得の低い地で潰れないでやってこれる唯一の理由は嘘がないことだと思う。相手が医者でも言えることしか患者さんにも話さない。(素人相手に煙に巻くことしない)お金持ちしか飲めないような金額の設定をして、健康に経済的な差をつけない。この当たり前のことが出来ない薬局が意外と岡山県には多い。