一発退場

 医療系大学間共用試験実施評価機構の理事の話が投稿されていた。その中で興味深い話が載っていた。以下はその中の一部。

 「解剖室の遺体保存用冷蔵庫に入って撮った写真を医学生SNSに投稿する、などといった事例に代表されるように、最近、医学生や若い医師たちの倫理観について問題視される出来事をよく耳にします。当事者の学生に対し、「遺体保存用冷蔵庫に入って撮った写真を投稿することは、モラルに欠けている」と指導しても、「冷蔵庫はダメなのか」と受け止めるだけで、本質的な問題点が伝わらない、という医学教育現場の嘆きを聞くこともあります。

 医学教育現場の嘆きはよく分かるが、実際に嘆きたくなるのは、そんな人間が医師免許を取って何食わぬ顔をして診療に当たっているところに出かける患者のほうだ。この程度の言葉の理解力の人間でも、受験仕様の問題の正答率は高く、高得点をたたき出す。そのためには多くの時間と労力を費やしているから、人と人が接するときの必要条件を満たす術を学ぶチャンスを犠牲にしている。壮大な無駄の中から得られることも多いのに。  なかなか世のエリート達も生きることが難しいらしくて、不祥事が絶えない。凡人の些細な悪意と違って、能力がある分影響力が強くて、さらし者になることも多い。それを見て、時に自分の能力のなさを正当化して見せたり、時に劣等感を慰めたりする。ただ年齢を重ねるにつれ我欲からすこぶる解放されるから、凡人でもいい生き方を簡単に模索し始められる。出来れば自分のためではなく人様の為に生きたいと思えるようになり、ありとあらゆる束縛から解放される。  本当に人を敬う心があるなら決して出来ないことを指摘され、ことの本質ではなく末梢の事がひっかかった医学生を医療の現場に送り出すべきではない。一発退場のルールがあってもよいのではないか。もっともそんな法律作ったら最初の一発退場になりそうなアホノミクスには出来ないだろうが。