管理

 姑との確執のせいで離婚後も体調不良が続く。実家に帰ってから食事も喉を通らないし、泣いてばかりで1日中布団にこもっている。死にたいと何度も口にする。病院の内科の医師に話を聞いて貰うときだけ何とか元気を出すが、帰ってきたら又哀しみに打ちひしがれる。内科の医師は心療内科の処方だけでは救えないと思ったのだろう、電話で「何か助けられる漢方薬はない?」と処方を尋ねて来た。ある煎じ薬と粉薬を処方するように助言した。母親がその日のうちに処方箋を持ってきた。母親も相当まいっていた。お嬢さんがもし来られるようなら一度会いたいと言うと、とてもそんな状態ではないらしい。ところが2週間後には、本人が処方箋を持って1人で車を運転してやってきた。肉体的にも精神的にも随分と楽になったらしい。僕が話を聞いてあげることで、なんとか薬の効くスピードを上げようと思ったのだが、必要なかった。  母親が薬を取りに来たときにお嬢さんは適応障害と診断されていると教えてくれた。適応障害とは、世界保健機構の診断ガイドラインによると「ストレスにより引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されている。なるほど確かに当てはまっている。食べれないわ、起きれないわ、家から出れないわ・・・で著しく生活の質は落ちている。ただし障害と言う言葉が正しいのか僕には分からない。僕にはその言葉の持つ語感が、本人の不調を克服しようとする意思を阻害するのではないかと思われるのだ。正常以外を障害と片付けてしまうことに抵抗がある。そもそも正常自体が怪しくなっていて、一体どのレベルが正常かも分からない。社会が歪んでしまっているのに、これに旨く順応できたりしたものなら異常極まりない。  立ち直れないようなショックを受けたとき、食べれて、起きれて、外出して遊びまくる、こんな芸当が出来たらそれこそ異常だ。じっと布団の中で力が湧いて来るのを待つ。それが自然だ。何でもかんでも病気にしてしまう。それは管理しやすいからではないか。生き方まで製薬会社の管理下に置くなど、真っ平ごめんなすってだ。