これはいい手だ。これからも再々利用しよう。  昼過ぎから母の見舞いに出かけた。その時には既に雨が降り始めていたから、傘を持っていくことにした。車での移動だから何処に寄っても、歩く距離などしれているのだが、さすがに冬の雨は冷たくて体を冷やしてしまうから傘を持って行くことにした。車から降りたのは3箇所で、施設もコンビにも至近距離に駐車したから、傘は利用しなかった。もう一箇所は、ユメタウンと言う大きな総合スーパーで、駐車した場所から入り口まで数十メートルあったので傘を使った。  スーパーの入り口には、傘を店内に持ち込むためのビニール製の使い捨てケースが用意されていた。多くの客がそれを使って店内に傘を持参で入っていく。ところが僕は入り口に持ってきた傘を立てて入って行った。店の入り口に無造作に立てかけられているのは僕の傘だけだ。店内はクリスマス用品を買い求める客もいて、いつも以上に混雑していた。僕は傘のことなど忘れて、パンと海苔と93円のリキュール酒を買った。どのパンを買うか迷ったのと、海苔が何処に陳列されているのか分からなくて探したのとで、20分くらいは店内にいたと思う。  その後僕は店から出たのだが、すぐに傘があるかどうか確認をした。当然のことながらあった。ただ、僕は心配をしていなかった。確信があったから、恐らく100人か200人か、或いはそれ以上の人が傘の前を行き来するかも知れない場所に堂々と傘を置いて買い物をしたのだ。この結果に僕は自信を持った。そもそも傘をビニール袋に入れる作業が嫌いで、むしろ雨にぬれることを優先するくらいだから、傘を入り口に立てかけて店内に入れるのはありがたい。この手を使わない手はないのだ。  ところで僕が今日使った傘は、いつ誰が買ったやつか分からないが、コンビニなどで売っている透明な傘だ。どのゴミの収集日に出していいのかわからないから、半年くらい行き場がなく雨ざらしにされているものだ。汚れてはいるが、ワンタッチ機能は健在だから便利だ。ただ一番の泣き所は、骨が2箇所折れていて、開いても半分だけが正常に開き、4分の1は地面と直角になっている。だけど、半分しっかりしていればかなり雨はしのげる。数十メートルの移動だから十分役目は果たすことが出来る。折りたたんで立てかけていても、骨が変形しているのはすぐに分かるから、盗られる心配がない。盗った人が処分に困るだろう。  必ずしもいいものを持つ必要はない。無くしてもいいようなものばかりだったら気が楽だ。ストレス社会にこんなことで「楽」が手に入るなら実践しない手はない。