横取り

 違うところよりも似ているところを探したほうが多いが、今回は違うんだなと思った。  明日、四国の三豊市と言うところで行われる和太鼓の大会を聴きに行くのだが、結構てこずった。遠いからかなり念入りにシミュレーションしてかの国の女性達に楽しんでもらおうと思っていた。行き方、途中の観光、昼食、勿論お目当てのコンサートと考えることは多かった。遠くてめったに行けないから、効率的な一日にしたくてあれこれ考え調た。 そして、いざメンバーを募ったら、なんとあれだけ和太鼓が好きな牛窓工場の女性達が参加しないと言った。その理由が僕には分からなかった・・・が・・・分かった。  行かない理由が、同じ工場のメンバーだけで行くのではないかららしい。僕にとっては、同じ国の人たちで、工場は分かれているが、同じ会社の人たちだから、なんら隔てるものはないと思っていたが、それらは太鼓への興味をはるかに上回る壁になるらしい。 今、牛窓工場には17人いて、太鼓のコンサートに連れて行ってあげられる確率がかなり減ってきた。なかなか均等に誘って上げられないから、僕は選抜するのに苦労すると思っていたのに、不参加とは思いもよらなかった。チケット代が高いから今回は4人を誘っていたのだが、そして、そのうち2人を牛窓工場の女性に割り当てたのに、断られてしまった。日本人の発想では、「行きたくないけれど悪いから行く」を選択するのが普通のように思うし、僕だったら正にそれを選択する。一瞬身勝手と言う言葉もよぎったが、少し考える時間を置くと、それもそうだなと納得できるようになった。狭い車の中で知らない人との2時間は窮屈だろう。他の2工場から参加の二人は、日本語が堪能で、日本の文化に関して知的興味をかなり持っている。だからメンバーのメンツよりも好奇心のほうを優先させることが出来るのだ。  こうしてみると日本人って結構生き辛いのかもしれない。何日も何日も考え、チケットを用意してあげて袖に振られ、それでも穴埋めを懸命に探そうとする。これは僕特有の動きではなく日本人なら多くが同じような行動をとるだろう。時にしんどく、時に空しいが、日本人の遺伝子は受け継がなければならない。日本人の長所を、アホの何とかみたいな口先だけのやつに、じじいの名誉を挽回するだけの為に横取りさせるわけには行かない。