三者三様

 三者三様とはこのことか。 「シアワセスギル」と言う最高の表現を使って、備中温羅太鼓の公演を喜んでくれたかの国の青年の寮が御津にある。明日行われる倉敷の第九のコンサートのチケットが8枚手に入ったから誘ったのだけれど「オトウサン ゴメンナサイ ニチヨウビ ミンナイソガシイデスカラ イケマセン ホントウニゴメンナサイ」と電話してきた。どうやら日曜出勤らしい。和太鼓の迫力に感激してくれたから今度は一転ベートーベンと趣を変えて楽しんでもらおうと誘ったのだが残念だった。  仕方なく今度は赤坂工場の寮の青年達に声をかけた。一人だけ和太鼓のコンサートに連れて行った青年がいて、その女性に後6人まで大丈夫と言っておいたら、昨日の夕方電話で「オトウサン、ミンナ アソビノホウガイイ ゴメンネ」と半ば失笑気味に伝えてきた。彼女は日本語1級を目指して働きながら勉強している女性で、来日して初めて日本の文化に触れることが出来たことをとても感謝されたのだが、どうやら後の12人の女性達は興味ないらしい。僕は出来るだけ質の高い体験をと思ってチケットを選ぶのだが、興味のない人には何の意味も持たないのだと勉強した。  二つの寮の青年達が行けないことになったので、今までとは全く逆の悩みが生まれた。いつもは、限られたチケットを如何に公平にみんなに順番に手渡すかに苦心していたのだが、今回は初めて行ってくれる人を探さなければならなくなった。最後の砦は牛窓の寮の青年達だ。満を辞して夜寮を訪ねると、本当に久しぶりに明日の日曜日が休みだって事が分かった。こうなればいつものように彼女達に任せて人選をしてもらえればいい。牛窓の寮の青年達はもう多い人で10回くらいは色々なコンサートに行っているから、そこからは手際よく進んだ。折角手に入れたチケットが無駄にならなくいてよかったと安堵した。  働いている会社の都合を知らずにチケットを手に入れるリスク。本当に内容に興味を持っているのか分からないリスク。そのことに気づかされた今週だったが、そんなリスクはしれている。リスクと言うよりちょっとした不都合だ。故郷を離れ、よく働き、明るく慎ましやかに暮らしている青年達のちょっとしたオアシスになれば、僕自身の存在に意味を感じる。  明日は荘厳な詩を聞きメロディーに浸り、勇気を喚起されて帰ってきたい。