0.3

 うかつだった。今まで雨上がりの土の表面の放射線量を測ったことがなかった。  教育委員会から電話があり、幼稚園の環境調査もしてくれとのことだった。黒板も無いようなところで何を調べればいいのか迷ったが、とりあえず小中学校に準ずるような内容で検査した。教室内の検査が終わり園庭に出て何気なく測っていたら、今までに無い数値が目に入ってきた。それこそ予想していない数字だから、小さかったけれど声をあげた。  小さな砂山があったから園児が喜んでこのあたりで遊ぶんだろうなと思い、それこそ何気なく測った。すると土の表面で0.26マイクロシーベルトの数字が表示された。福島の後ずっと測ってきたが、0.2を超えたことは無い。今までの最高でも0.15くらいだったと思う。0.15を見てもいやだなと思っていたのが一気に0.2を突破していたのだから声も出るだろう。驚いて持っていっていたスコップで穴を20cmくらい掘ると数値は0.28に上がった。同じような値は花壇でも出た。  その砂山がいつ作られたのか尋ねると先月だった。何処の会社が何処の土を運んだのと尋ねると、運んだ会社だけは分かった。その時はその砂に問題があるのだろうと考えたが、午後から検査したほかの幼稚園でその推測が正しくないだろうことが分かった。と言うのは、午後からの幼稚園では、ついに0.3マイクロシーベルトの値が出たのだ。そしてその原因を探ったが、朝の幼稚園のような特別なことは無かった。同じような値が出たのだから、恐らく一般的な原因で数値が上がっているのだろうと考えざるを得ない。と言うより素人の僕が原因に迫れるとは思えない。僕なりに得た結論は、(決して自信はないが何らかの結論を得ていないと居心地が悪い)空気中の放射能が明らかに増えているってことだ。西風に乗って、地球を1周して届く。これを既に数え切れないくらい繰り返しているせいだ。いったいそれでは東日本はどのくらいの放射能を溜め込んでいるのだろうと心配になった。海洋に流されるものが時折話題になるが、空気中に放散される気の遠くなるような量の放射能は話題にも上らない。話題にしては困るやつらが、ありとあらゆるものを動員して閑古令を強いているのだろう。  いや待てよ、4年間の蓄積ではなくて、何か新たに・・・