悪夢

 僕は問診で夢について尋ねることが多い。その中であえて悪夢と言う問いかけもしてみる。単に夢を沢山見る人と、悪夢を見る人とは処方が同じでいい訳がない。悪夢を見る人のほうに薬剤師として、より気持ちを込めなければならない。  そんな僕が昨夜悪夢を見た。2度寝だからほとんど今朝に近かったが、目が覚めると動悸がしていた。少し圧迫感もあった。息苦しさが目覚めてから1,2分続いたような気もする。もともと僕は、夢を見ない日はないのだが、悪夢はさすがにめったに見ない。悪夢は夢を見ているときも、目覚めてからも結構しんどいものだ。  なぜか僕はグラウンドを走らされていた。集団で走っていたから出展は、恐らくプロ野球のキャンプレポートの中の一こまだろう。野球を見る習慣はないが、ニュースの後の流れで目に入ってくることがある。強靭な人間達と走っていたからとてもついていけなくて、夢の中であえいでいた。そんな僕をなんと家族の中の一人が、叱咤激励ではなくののしった。これこそ悪夢だ。理想の家族ではないがののしるようなことはない。それが夢の中で、ひょっとしたらこちらのほうが真実に近いかもしれない状況で僕はののしられた。これだけ尽くしているのに・・・とは思わなかったが、気持ちのよいものではなかった。  毎日緊張の中で、それは決していやな環境ではないが、暮らしているので夢は必ず見る。寝ていても覚醒しているような生活だ。僕の頑張る理由だからそれはそれでいいのだが、10年位前に折れた、それこそ悪夢の再現だけは避けなければならないとゆるくブレーキは踏んでいる。ただあの頃より確実に僕の心身は中古車になったから、持つかどうかは自信がない。  人生に夢をなくした頃から皮肉にも毎晩夢を見出した。被告席に立ち、深層心理にもてあそばれながら遅い朝を待つ。