病気や体調不良を支配できている間はまだ、日常生活の質を落とさなくて済むが、病気や体調不良に支配されるようになると、生活の質は格段に落ちてしまう。支配している間は、やりたいことややらなければならないことに関心が向くが、一度支配される側に回ると、病気や体調不良を克服することが目的化してしまい、本来のやるべきことややれることが二の次になってしまう。まさに逆転してしまうのだ。東を向いて歩いている人が、西へ進路をとったようなものだ。  多くの方の相談メールを読ませていただいたり、直接電話を頂いて相談を受けると、この逆転した方が多いことに気が付く。僕みたいな年齢になればそれもまた致し方ないかと思うが、相談してくれる人の多くは、生命力が本来ははちきれそうな世代であったり、社会の中枢にいるような方であったりする。それらの方にコントロールする側に帰ってもらうには、病気や体調を治すのが一番、いや唯一それが手段のような気がする。江戸時代ではないから意思の力でなんてのは、所詮無理で、科学の力を借りなければならない。やじろべいのように揺れる病勢を正常のほうに傾けるのが医療の仕事だ。抱えなくても良いものを抱えて生きなければならない時期は必ずある。誰もがそれらをコントロール下において、その後の人生の礎になればいいなと思う。