仲間

 公務員は体制批判をしないのかと思ったが、心のうちは結構不満を持っているもんだ。もっとも今の政治状況を見て不満も不安も持たないのはよほど上手い汁を吸える立場の人だろう。場外に置かれている人間にとっては当分辛い時代が続く。  薬局は守秘義務があるから、ここから話は出て行かないと信頼してくれているのだろう、ポロリと本音を話してくれる。これは治療にはとても重要な要素で、何かを治したい人が強がっても仕方がない。強がれば強がるほど治癒は逃げていく。正直に苦痛を訴えるほうがよほど治りやすい。体調はもちろんだが、環境や状況の不満も同じことだ。口から出して何かが変わるわけではないが、口から出せば出すほど苦痛は減っていく。捨てるって素晴らしいことだ。ひょっとしたら拾うより難しいかもしれない。  「今の政権が代わらなければ僕の病気は治らないです」と自分の不調が長引いている理由を説明してくれた。僕を責めるのではなく、政権のせいにしてくれたのはありがたいが、彼だけではなく、日常的に今の雰囲気に窒息しそうな人は多いのではないかと思う。そして当然その日常を覆う不快さは体調にも大きな影響を及ぼすだろう。怒りか悲しみか失望か、どう転んでも良い心地ではおられない。  その彼を治すのは僕の役割だと思っていたのだが、どうやら漢方薬では荷が重過ぎる。こういうときは昔なら必殺仕置き人、現代はイスラム国。これが結構彼には受けて。電話の向こうで大笑いしてくれた。1日中あの笑いを彼に届けることが出来たら彼にも快適な日々を取り戻してもらえるのだが、残念ながら声も届かないような奈落に庶民を落とそうかと言うばかりのあいつ等に去勢された仲間の中では笑えまい。