限界

「先生の漢方薬で何とか乗り切っています」若い女性がそう言ってくれても、背景が解決しない限り、その家族に安泰が訪れないことがわかるから、喜ぶことは出来ない。家族中の多くの不調は取ってあげれるが、それは家族の周辺症状でしかない。本丸は漢方薬でお世話できるものではない。僕がお世話し始めて、少しずつ本丸の事情が漏れ伝わってきて理解できるようになったが、懸命に生きているごく普通の家族に襲い掛かる得体の知れない不幸は、現代社会ではどこの家でいつ起こっても不思議ではないくらいありふれている。いつのころからそうした人を家庭が抱えるようになったのか知らないが、そんなに昔からのことではない。ひょっとしたらこの数年、いや10年くらいと言ってもあながち間違いではないような気がする。 何が間違ったのだろう。多くの若者が、そして今や元若者が失意のうちに時間を見失っている。使うべきものから呪縛されるものに変わっている。まるで無限に、圧迫感を持って続く見えない障壁に、どれだけの人がもがき苦しんでいるだろう。そしてその周囲で右往左往する多くの家族が見える。誰かのせいに、何かのせいにしてでも早く呪縛から解放されてほしい 漢方薬の、僕らの限界を突きつけられる日々だ。