臨終

よく医者が原作者になってドラマが書かれることがあるが、息子の話を聞いていて、なるほどネタには困らないんだと思った。薬剤師みたいに、物(薬)相手だとなかなか面白い話には遭遇しない。なるべく仕事の話はしないようにしているが、昨夜の夕食時間に面白い話をしてくれた。テレビで病気を扱った番組をしていてその話の延長で出た話題だった。  先輩から教訓として教えてもらっていることがあるらしい。その先輩が、大学病院で働いていたとき、ある患者の臨終に立ち会った。大学病院だからこその話だが、亡くなったら献体していただけないかと、枕元に集まっている家族にお願いしたらしい。すると家族ではなく、今まさに亡くなろうとしている病人が「よろしくお願いします」と答えたと言うのだ。何でも、人間の六感で最後まで機能しているのは聴覚らしくて、その人はまだ耳だけは機能していたのだ。だからまさに亡くなろうとしている人の前ですら、いや、前だからこそ、細心の注意を払えって言う教訓だ。当事者でない僕にはまるで笑い話だ。若干ホラーっぽいが、また不謹慎かもしれないが、大声で笑った。吉本新喜劇がまさに現場で行われていた。