粉飾決算

 またまた目から背びれ、いや尾びれ、いや目からエラ、いや目から鱗だ。  毎回毎回だと元々忍耐力に自信がない僕だから「いい加減にして」と言いたくなるが、そこは笑顔で「ご飯にみそ汁」とか「コーヒーにトースト」などと漠然とした返事をする。本気で答えるほどのものではないという気持ちもあるし、我が家が如何に粗食かも分かってしまいそうだから、当たらずとも遠からずってとこで答えている。  かの国の子達は、朝会うと必ず「オトウサン、アサハ ナニヲタベマシタカ?」と聞く。確率で言うと90%は越えると思う。車に乗り込んで3分もたたないうちに必ずその質問が来る。僕は語彙が少ないからかと思っていたが、実はそうではないらしい。昨日の夜、食事をしているときに何の話題からそうなったのか忘れたが、息子が「東南アジアの人は挨拶代わりで食事を済ませたかどうか聞くよ」と教えてくれた。語彙が少ないわけではなく、好奇心でもなく、僕らの「良い天気ですね」に近い感覚らしいのだ。僕がもし食べていなかったらどうするんだろうねと尋ねると、実際に食べさせてくれるらしいのだ。どこからとなく、例えばそれが兄弟や近所などから調達してまで、ご馳走してくれるらしいのだ。日本でもいつの時代にかあった光景だろうが、勿論僕などはしらない時代の知らない地域の話だろうが、さすがに記憶がないのでノスタルジーは感じなかった。それと東南アジアは食材が豊富で安いから食生活にも結構気を使っているとも教えてくれた。だから食生活は結構豊なのだ。寧ろ日本みたいに、特に最近のファーストフード頼りの日本みたいに、食で命を縮めるようなことは未だしていないらしい。  「朝ご飯くらい食べるわ」と最初のころは言い返しそうになっていたと息子も言っていたが、彼も又忍耐から笑顔を作っていたのだろうか。ただ彼の場合は日本にいるより遙かに落ち着くと言っていたから、粉飾決算は必要になくなったのだろう。