集会

 別に興味があったわけではないが、一人フラッシュモブが実行できなくなって日曜日をもてあましそうだったので、妻に言われてある集会に出席した。開始時間まで必死で時間を潰して数分前に会場に着いた。2階会議室とチラシに載っていたから階段を上がっていくと、その集会の案内が見あたらなかった。部屋はいくつかに別れていて、ある部屋では中から声が聞こえていた。施設の人みたいな服装の女性がいたから尋ねてみると、彼女はその様な集いを知らなかった。僕がチラシを見せると確かこの部屋ですが、他の方達が使っていますよと教えてくれた。なるほど中からは楽しげな声が聞こえてくる。親切なその女性は階下の事務室に様子を尋ねに降りてくれた。そして程なく帰ってくると気の毒そうに「同じ会場を同じ時間に二つのグループに割り振っているみたいですよ」と教えてくれた。  それを聞いていたある初老の男性が、僕を手招きして隣の和室の小部屋に案内した。さっきまで僕と同じようにロビーにいた男性だ。畳の上に座るやいなや、持って来た資料を拡げ始めた。どうやらこの方が講師らしい。そこへ又一人の老人がやってきて、3人で少しの時間を過ごした。僕のことが気になったのか初老の男性が、「演題に興味があるのですか?」と尋ねたから「嫁さんに言われてきました。別に興味はありません」と答えた。いつものように嫁さんの圧力に負けたのと、まるで予定のない日曜日だったので、次善の策だった。 予定時間が10分以上も過ぎてから、隣の集会の人達が会場を譲ってくれた。しかし会場にはその後加わった初老の婦人の4人だけだった。僕を除いた3人は親しいらしくて会話が弾んでいたが、僕は全く手持ちぶさたで無駄に過ぎていく時間にいらだっていた。そのうち誰々は欠席、誰々は疲れが出ているから云々と、もうこれ以上人が増えないだろうことが分かった。そしてもう1人重要なキーパーソンを待っていることが何となく3人の話で分かった。もう30分は優に過ぎている。僕は妻から、そしてチラシから、今日の集いは憲法改悪に反対する集会だと思っていた。だから時間ぎりぎりで席があるのかと内心ミスッたと思いながら教会の門をくぐったのだが、どうも講師が3人で聴取が2人になりそうだ。会場を取り損ない、予定時間を30分過ぎても始めようの言葉を誰も発しない。憲法以前の問題に僕の忍耐も底をついた。どうも最近待たされることが多くて、勝央町に和太鼓を聴きに行ったときもうどん一杯で30分待たされたが、憲法でも30分待たされるとは思わなかった。あの日、懸命に動き謝り続けていた女子高校生に優しい言葉を思いついてかけることは出来たが、この知的集団に声をかける気はしなかった。「失礼します」と冷静を装って挨拶をしたら「もう少しで始まりますよ」だって。「あんたらのもう少しはどれだけなの?」と聞き返したかったが、それ以上関わりたくなかった。崇高なテーマとのあまりの乖離に失望したから。ただそんな光景は何度も見てきたから今更どうでもいいのだが、そこでの僕の居場所がどんどんなくなっていく。