詩吟

 インドネシアの楽器によるコンサートとうたい、ゲストで即興ジャズの赤田晃一が出演するとパンフレットに書いてあったからコンサートに行ったのに、何組目かに出てきたのは、僕よりいずれも年配の男女で、それも各々10人くらいいたと思う。いでたちは男はスーツ、女性はドレスだったが、先生と呼ばれていた人は、と言うのは出演前には客席の僕の近くにいたのだが、男も女も着物姿だった。  どんな演奏をするのかと思ったら、と言うより一足早い第九でもやるのかと思ったら、なにやら腹の底から声を出し、聞き取れない言葉をうなりだした。曲?の紹介の時から意味不明なのだが、一度だけ新島襄という言葉が聞こえた。恐らく彼が作った曲?なのだろう。結局予定されていたらしい3曲?に1曲?増やして4曲?唄った?演じた?朗読した?吟じた。演目の全てを、単語も含めて理解できなかった。だから感動もなかったが、姿勢が良く、何となく皆さん「真面目そう」という印象は強烈に残った。詩吟なるものを好んで練習する人が本来的にそうなのか、詩吟なるものが本来持っている力か知らないが、いずれにしても丁度僕の対角線上に位置するような人達だと感じた。  街が大きいと、色々な人材がいて、文化も多彩に花開くのだと羨ましかった。自然以外に自慢する物がない町に、誇れるような人材はなかなか現れないが、キャベツを作らせたら、魚を獲らせたら、船を修理させたら、オリーブを育てさせたら、漢方薬を作らせたらレベルでみんな精一杯生きている。