今夜は父子家庭

 仕事が終わっただろう時間帯に息子に電話を入れ、夕食のおかずを買ってきてくれるように頼んだ。息子はスーパーのビニール袋をぶら下げて帰ってきた。早速覗いてみると、自分用のビールの他に、お好み焼き、ブリのカマ照焼き、ボイルヤリイカ、小魚の佃煮、そして明朝のサンドイッチが二人分ずつ入っていた。野菜は全くなかった。冷蔵庫に何かわからない野菜を煮たのが昨日からあるのを覚えていたから、それも食卓に並べた。お茶がなかったので慌てて自動販売機に買いに行ったが、恐らく5分くらいで夕食の用意は出来たと思う。ご飯は、炊飯器の中に昼のお粥が残っていたからそれを片づけようとしたら冷たかったので息子が少し迷っていたが、その辺りは全く拘らないので二人で冷たいお粥をすすった。丁度医学のテレビ番組をやっていたからそれを見ながら、僕の患者さんに対する漢方処方などを話しながら父と子だけの時間を過ごした。  勿論料理を皿に分けたりしない。パックを拡げ食べるのだが、その時間帯に買い物をすれば安くなっているみたいで、30%OFFとか物によっては50%OFFになっていた。なかなか上手い買い物をしたねと褒めてやったが、つい全ての臭いを一応かいでから食べた。勿論冷蔵庫の野菜も炊飯器の中の冷たいお粥も。男二人では全てが心許ないから。  実は午前中に母をあずかって貰っている施設から電話があり、転んだか落ちたかして、痛がっているというのだ。岡山の総合病院に連れて行ってみて貰ったら、肋骨が4本折れていて、水も溜まっているらしい。痴呆があるから家族の人に泊まって欲しいと言われ、急遽妻は帰らないことになった。そこで上記のように息子に連絡して夕食作り?をしたのだ。  今日僕らは、買い物籠を抱え夜のスーパーを徘徊する独り者の男性になった。とても健康のことなど考えてもいない独り者になった。好きな物だけを買い物籠に入れる独り者になった。