貢献

 やっとと言うか、偶然というか、仕方なくと言うか、他に選択肢がなかったからというか、何故手に入った資格か分からないが、唯一の資格薬剤師ごときが、近い将来多くの悩める人達を救い導く職業に就こうとしている人に意見するなど以ての外かもしれないが、僕の存在自体が以ての外だからその辺りは彼の職業柄の寛容で許して貰う。  性格柄万全を期そうとするその人の、期せなかった部分が僕は寧ろ大いなる武器になると思っている。僕は、彼とは逆の自信に満ちた人達の美しい言葉に勇気づけられたことも慰められたこともないから、自信なさげな彼こそ多くの人達、それも苦痛を抱えた人達を 将来救えるのではないかと期待している。薬剤師が手助けできる分野で彼と接してきたが、思春期、青年期と悩み苦しんできた歳月こそが、他者を導ける力の源になるのではと思う。  いつもの何も訓練されていない僕の話に頷いてくれる彼は、恐らく近い将来多くの人の前で道を説くのだろう。道を知らない僕が、道を究めようとしている人を少しだけ手助けし、その人が多くの人を助け導く。僕は小さな貢献しかできないが、僕の漢方薬を飲んでくれた人が大きな貢献をする。所詮田舎の薬剤師など、その程度のことしかできない。