勘違い

 何を勘違いしているんだ、この恩知らずが。モコちゃんだっていつも気にして巣の下を通るときは見上げているんだ。いくら体型や色が猫そっくりだとしても、あの仕打ちは何だ。モコはモコなりにカラスから巣を守っているのだから。 朝5時には目が覚め、新聞を念入りに読み、生ゴミを出す。相変わらずゴミは漁られている。何がこんな狭い空間を通り抜けるのか分からないが、未だ完全には侵入を防げていない。それはさておき、ウォーキングから帰ると必ずモコが迎えに降りてくる。殊勝な性格故ではない、単に朝の用足しのためだ。用足しは隣の空き地で十分だ。250坪ほどあるらしいから、小型犬には充分すぎる広さだ。いつものようにモコが草むらを歩いていると、4匹のツバメがモコ目がけて繰り返し急接近しては飛んでいった。チキー、チキーという警戒したときの特有の鳴き声を発しながら数回威嚇を続けた。幸いモコは気がつかなかったみたいだから心が折れた様子はなかったが、一家あげてツバメを守っている家の主としては裏切られた思いだ。  犬畜生にも劣ると良く言われるが、これが本当の犬にも劣るだ。もっともあの小さな頭の全部が脳みそだとしても、たかがしれているだろうから期待する方がおかしいが。ただ本能で敵か味方くらいは見極めろと言いたい。人間社会ではその本能をなくしたばかりに、貧乏人が金も肩書きも権力もある人間を卑屈にももり立てたりするのだから。