お釣り

 何かで読んだことだが、人間の内臓は100年以上持つように出来ているが、骨格系は山50年らしい。だからそれ以降はお釣りのようなものだ。そのお釣りをうまく乗り越えられる人と、そのお釣りにこそ苦痛を集中させている人がいる。嘗ての平均寿命はうまく設定されていたように思えるが、人が寿命をどんどん延ばしてきたせいで苦痛期間が長くなった。 寿命の伸びに従って人は多く働くし、多くスポーツをする。そのせいでかなり負担を体に刻んでいる。病院に行って、それを治してと言っても、外科的な処置以外はなかなか難しいだろう。痛みを抑える薬や筋肉を弛緩させる薬くらいしか思いつかない。治すと言うより苦痛を如何に軽減するかだ。もし治癒力がまだ体に残っていれば大いに改善するし、残念ながら生命力が衰えていたら、なかなか治癒傾向にはならない。  もうこうなれば如何に元気を貯金しているかだ。良く食べ、良く歩き、良く笑うくらいしか武器はない。筋肉の落ちていくスピードを遅くし、気を巡らし血流を改善することくらいしか手がない。最近多くの骨格系の苦痛に関する漢方薬を作るが、おおむね僕の意図していることはこの様なことだ。何処まで漢方薬でその代行が出来るか分からないが、それ以外には考えられない。  現代薬か漢方薬か二者択一を求める人がいるが、それはもったいない。両方のいいとこどりをして如何にお釣りの期間を苦痛なく過ごすか、各人が考えなくてはならない。痛い痛いと訴えても誰も他人の本当のところまで理解は出来ないのだから。