打開

 ない知恵を絞っているが、元々ないのだから絞っても仕方ない。しかし諦めきれないから、一番苦手とする役人言葉の羅列を忍耐強く読んだりした。その結果分かったことは到底無理という残酷な答えだった。  先進国の日本に何の特殊技術もない後進国の女性が再びやってくるなんてのは到底無理な話なのだ。こちらから向こうに行くのは恐らくかなり容易なことだからひどく不公平だ。この事実だけで居心地の悪さを感じる。こうした不公平を少しは改善しようと言う動きもあるみたいだが、目の前にいる子を救うにはまだまだ先の話らしい。 先に国に帰った子がとても日本語が上手で、日本で勉強したいと言っていたのを思いだして、留学という手もあるかと思いついた。そこでインターネットでその可能性を調べたら、僕の理解では可能ではないかと思えた。全く縁の無かった分野だから、単純にホームページを信用するようなことはしたくないが、何ら問題もないように思えた。働くための再来日が圧倒的に難しいのに比べて、かなり簡単なような印象を持った。何を持ってその様な差があるのか知らないが、可能性が少しでも出てきたことは嬉しい。親のために日本に働きに来て、日本人が避けるような仕事を嫌がりもせずこなし、給料のかなりの部分を仕送りしている。この単純にして清い動機の前に僕は多くの自省を強いられた。もう一度日本に来たいという希望に僕が傍観者ではいられない。  ない知恵はこれ以上絞れないが、智恵の上積みなら出来る。ひょっとしたら、役人言葉を乗り越えようとした僕には珍しい気概が事態を打開してくれるかもしれない。