道連れ

 目を合わせるのが余り得意ではないシャイな青年が、微笑みを浮かべながら「仕事についたんで」と教えてくれた。その嬉しそうな表情こそが僕らの職業の人間にとっては真の報酬なのだ。その表情を出して貰うために、ない知恵を絞っている。達成感はかなりのもので、その達成感を途切れることなく得ることで、毎日の仕事に打ち込める。 多くの青年が仕事に溢れる他の国ほどでもないが、この国も知らぬ間にその背中を追っているような気がする。富が老人に集中し、若者は家庭も持てず、液晶画面に空しく向かっている。嘗て贅沢三昧した付けを若者に押しつけ、放射能で遺伝子を傷つけ、次には兵隊にとることで人生で一番解放される時を奪おうとしている。飼い犬宜しく、見えない鎖でつながれ、毎日ドッグフードを皿の上に盛られるのか。 いつでも逃げられるように若者はパスポートを用意しておくべきだ。自分を守ること以外に何を優先しよう。国が国民を守るなんてことがあり得ないことは原発で目の当たりにした。安全安全と言い続けて守ったのは国民の命ではなく東電だ。  ただ仕事にありつけるだけで、あんなに嬉しそうな表情をする青年達の未来を奪う奴らの増殖を手助けした彼らの親や祖父母達の責任は大きい。我が子やわが孫の首を絞めていることに気がつかない。そんな人間の道連れだけはごめんだ。