野心

 漢方薬を飲んでいるウツウツの方の奥さんが「ヤマト薬局のいいところは、余分なことを尋ねないところ」とご主人が言っていたと教えてくれた。それがいいところかどうか分からないが勿論意識などしていない。その方がどう言った背景を持っているかなどほとんど興味がないのだ。ただ薬が効いてくれればいい。その一点で責任を果たしたいといつも思っている。
 昨日来た女性は歌手だと言うことは分かっている。歌手でも色々あるだろうが、その色々のどれかは分からない。ただ一つだけ言えるのは今をときめく流行歌手ではないことだ。もしそうなら毎日のようにテレビでお目にかかるだろうが、それはない。となると・・・と考えてもその道のことはさっぱり分からない。そしてやはりそこから先は興味がない。  その方は、あるトラブルで歌えなくなったのが、時間はかかったがほとんど復活してもらえた。再び歌えることを唯一の目標として漢方薬を飲んで頂いていたのだが、女性にとっては有り難い副産物があったと昨日教えてくれた。体力(免疫)を付ける煎じ薬をずっと飲んで頂いていたのだが、不調に陥る前よりも声が若くなったと仲間から言われるそうだ。そしてこれは本人の自覚らしいが肌も綺麗になり、髪の毛も太くなったのだそうだ。これらのことは本人ではないから教えて貰わないと分からない。その人の背景などは興味ないが、こうした服用中の体調変化にはとても興味がある。そして日々の人体実験?から大いなるヒントを貰うことになる。 職業に関わることだからとても熱心に服用して頂いて、曲がりなりにも再び満足に近い辺りで歌えるようになった。こんな田舎の薬局が役に立つことが不思議かもしれないが、こと漢方薬に関してはもうハンディーはないように思う。寧ろ、自分の土地、自分の建物、安い生活費などを考えると、圧倒的に田舎の立地の方が有利のように思う。本当は一番にあげたかったのは「経済的にも、人間的にも野心がないこと」なのだが。