真骨頂

 なるほど、こういうことを嘆いていたのか。初めて経験した。 都市部の勉強会に出席すると、ある不思議な悩みを聞くことが多かった。勿論、聞いてみるとこの国の仕組みからそれもありかと納得は出来るのだが、実際その様な行動を見識ある、いや経済的にも圧倒的に恵まれている職業の人がとらないだろうと勝手に想像していた。 変骨と言っても右に出る人はいないようなある男性が、今日教えてくれた。その人が数年来困っていたあるトラブルを数ヶ月前漢方薬で解決してあげた。以来時々思い出したようにその漢方薬を取りに来るが、こぼれ話として教えてくれた。  彼は市外のある病院に成人病の薬を定期的にもらいにいっているが、医師にあるトラブルがこの漢方薬で治ったと僕が出している漢方薬を見せたらしい。するとその医師は、病院にもあるから処方せんを切ってあげようと言ったそうだ。  都会の勉強会で薬局が多く口に出す悩みはまさにこのことなのだ。折角治してあげても、医師が保険を餌に手柄を横取りするそうなのだ。いや効果が約束されるところまでは薬局だったのだから、手柄ではなく経済を横取りされていると言うことになる。これは面白くもないし、結構経済的に響いて、深刻そうに口々に訴える。僕はそんな経験は一度もなかったので、都会ってドライだなあと、それこそドライに傍観者でいた。ところが今日その男性から同じような内容の話を聞いて、ついに田舎にまで乾燥した関係が入り込んだかと残念に思った。ただ救いは、その変骨の真骨頂として「治してくれたのはヤマト薬局だから、薬はあそこでお金を出して買う」と言ってくれたらしい。  ああ、あの変人がなんて湿っぽいことを言ってくれるんだと嬉しかったが、こんなことで仕事のモチベーションを削がれたらもったいない。こういったことを昔の人はなんて言ったっけ。鳶に何かをさらわれると言ったような気がするのだが。はんぺんだたっけ、いや、ハムを、いやかまぼこを、いやちくわかな。