両立

 時々漢方の勉強がてらにやってくる女性の薬剤師に昨日、ある青年を引き合わせた。県外から体調不良の相談に来てくれたのだが、僕以外の人間と接することで、新たな展望が開けないかなと言う期待と、薬剤師も勉強だけで実体験がないから、人の相談に乗って上げる初めての体験をしてもらいたかった。まさ二兎が追える状況だったのだ。その上、相談者と同じような体験を持つ薬剤師だから、余計青年の苦しみが分かってあげられると思ったのだ。  丁度その時間帯に、僕も若夫婦もそれぞれの応対で忙しかったので、1時間余りとても助かった。と言うわけで僕は二人の話のほとんどを聞いていないし、聞くつもりもないし、聞く必要もなかったのだが、ただ一つ言えることは、僕や若夫婦の応対とはおよそ趣を異にしていたってことだ。僕の家族は、やって来てくれる人も含めて結構大きな声で話す。又、自分の症状が他人に聞こえてもあまり関係ないかの如くどなたも話してくれる。勿論結構広域から集まってきてくれるからお互いを知らないってこともあるのだろうが、誰もが悩みは抱えていて、それを口から出してしまうことで結構楽になれることを多くの人が気づいていることもある。それに引き替え二人は、声を落とし、他の人には聞こえないように話していた。元々静かな語り口の二人だから意識しなくてもそうなったのだろうが、まるで姉が弟の悩みを聞いてあげているような感じに聞こえたし、見えた。こんな光景もあるんだと、新鮮な印象を受けた。  漢方薬を勉強してどの様に活かしたいのかハッキリと口から聞いていないから分からないが、薬局内にこうした光景もあってもいいのかなと思った。漢方薬局の多くが営業的に苦戦を強いられている時代に、時にカリスマを演じる経済至上主義者が闊歩するが、本当は治療の実績と適度の経済との両立を果たすべきだと思う。どちらが欠けても、どちらに傾いても駄目だと思う。えてして耳に届くのは、実績よりカリスマぶりばかりだが。  白衣を着た優しい姉の想いが是非青年に届いて欲しい。