憤怒

「私と話をしていて、心が病気を作っているように思えますか?」発した本人が一番良く分かっているからこのような単刀直入の質問が出来たのだと思う。一度関東から訪ねてきてくれたし、2週間に一度数十分電話で話をしているから彼女のことは良く分かっている。娘よりは年上、妹にしては若すぎる、丁度その辺りの年齢だが、常識をわきまえて、都会人には思えない素朴さも持ち合わせている。繊細な心の持ち主かもしれないが、そんな風にはいっさい見えないし感じられない。どちらかというと落ち着いた大人の女性だ。僕も一切、心が作ったトラブルには見えないと答えた。  色白で冷え性でスリム、それにもう一つ加えると、圧倒的に運動量が少ない人が健康を維持するのは至難の技だ。熱量を作れないのだから、体の機能を倹約しながら暮らしているようなものだ。何処かしら不調を抱えて当然だ。大きな病気をする程の体力もないから、色々と不調を抱えながら長生きするのもこのタイプだ。倹約は温存にも繋がる。内臓機能や血管の柔軟性を負荷をかけないことによって温存できるタイプとも言える。これは長年の僕の観察によって得た結論だから、根拠はいたって脆弱だが当たっているような気がする。それが証拠に、がっちりした健康体の人が若くしてころっと亡くなるのはしばしば経験することだ。  富が一部の人に集中し、放射能を浴びせられ、家を追われ土地を奪われても物言えぬ時代に心穏やかに生きろなどと言われても、笑顔ばかりでは生きていけない。心の不調のせいにでもしないとそれこそ心を病んでしまう。だが決して病み負けないで欲しい。負ければ負けるほどあいつらがより強くなる。何万、何十万の人を発ガンさせても何ら責めを負わない不条理を許してはいけない。憤怒を持って導く体調もあるのだから。