些細

 「日本うつ病学会は27日までに、多様化するうつ病を適切に治療するための医師向け指針をまとめた。次々に開発されている抗うつ薬の有効性や副作用に関する情報を盛り込み、軽症者の安易な薬物療法に警鐘を鳴らしたのが特徴だ。指針は、急増している患者の多くは軽症か、うつ病の診断基準以下の「抑うつ状態」と推測されると指摘。臨床現場では「慎重な判断が求められる」とした。軽症者に抗うつ薬の使用を始めるには、焦燥感や不安感の増大などの副作用に注意して、少量から始めることを原則とする。「大量処方や漫然とした処方は避けるべきだ」と明記。「安易に薬物療法を行うことは厳に慎まなければならない」と強調している。若者に多くみられ、仕事ではうつ状態になるが余暇は楽しく過ごせるような、いわゆる「新型うつ病」に関しては、「精神医学的に深く考察されたものではない」として取り上げていなかった。  数日前に新聞に載っていた記事だから目にした人もあると思う。これはもう随分前から僕が言っていたことと合致している内容だ。その分野の素人の僕だって分かっていたことが、なんでいま頃まで分からなかったのか、いや、分かっていたのに表沙汰にしなかったのか。何を守ろうとしていたのだろう。患者か医師会か製薬会社か。金になり票になるのは後の二つだから、患者の体調を犠牲にして莫大な利益をもたらそうとしたことは明白だ。現在進行形の何かの構図とそっくりだ。およそ力を持っている人間達の考えることは同じだ。庶民の命など軽いものなのだ。合法という大義名分を味方につけることが出来る人間にとってはいともたやすいことなのだ。おにぎり一個盗んでも捕まるのに。 僕はウツウツとした生活を送っている人が、診察を受けたばっかりにうつ病にされるのを多く目撃してきた。だからその様な人にはまるで冗談のように接して漢方薬で治すことを心がけ、多くの好結果を得ている。当初は薬局ごときがと思っていたが、漢方薬のハーブ効果を目の当たりにして、薬局こその出番の範疇があることを知った。以来、多くの方にウツウツから脱出して貰っているが、結構この分野の達成感は大きい。それらの方に一つ大きな発見をさせてもらえたのだが、この分野のトラブルが解決したら全員とても若返って見える。男性女性を問わないが、特に女性の場合は簡単に10歳くらい若返ってしまう。 幸か不幸か僕の薬局は暇だから、多くの言葉が行き交う。決して一人だけのために時間を費やすことは出来ないから、無駄な会話はいっさいしないが、必要な気持ちの交通は充分する。まるで教科書のような生き方とはほど遠い僕だからこそお相手できる人がいる。皮肉にも幾多の大小の挫折がその方々のために役に立っている。あの時もし僕が東京大学に合格していたら、あの時もし僕が福山雅治とデュエットを組んでいたら、もしあの時もう100万番くらい早い空くじを買っていたら、もしあの時綾瀬はるかと目を合わせていたら、もしあの時100メートル走でボルトを追い抜いていたら・・・ああ、これらの些細な挫折をみんなと共有したい。挫折は病ではない。