僕に言わせればもう完治だから、後は不真面目に薬を飲んで自然に離れていったらいいとアドバイスした。僕もいい笑顔をしているなと思っていたのだが、その方が帰ってから妻が「歯を出して笑っていたね」と言った。久し振りに耳にする表現だったから結構新鮮に聞こえた。まさにその表現がぴったりだったので尚更印象深かったのかもしれない。 朝一番の出来事だったので、今日は少しその事を意識して応対した。するとやはり歯を出して笑う人は、もう調子がかなりよくなっている人だ。それこそ例を挙げればいっぱいあるが、それをやってしまうと「あれ私のことだ」と言われそうなので今回は止めておく。漢方薬でこんな病気でも治るのかと思ってくださるから列挙したいが、今回は自重する。  逆に歯を見せずに、僅かに頬を動かすだけの人は、調子がまだまだの人だ。冗談を言うこちらが何か悪いことでもしたのかと思わせるほど威嚇する人もあるが、そうした人は尚重症だ。笑いは精神状態だけでなく体調までも推し量れる貴重なバロメーターだと思う。だからこそ僕はそれを殊更重要視してきたが、それは仕事の範疇だけでなく、色々な生活の場面でとても大切な社会の緩衝剤になっていると思う。笑顔があれば争うこともなくなる。それと笑顔の人はみんなとても綺麗でハンサムだ。その笑顔の瞬間はとても人を和ませるオーラが出ていて、どんな人工的なものより美しさが映える。どんな雄弁よりもたった一つの笑顔のほうが心を打つ。  はしたないほどに歯を見せて笑いあえる関係をもっともっと沢山作っていきたい。