巨悪

 この果てしない無関心は一体何なのだ。幸運にも西に位置し、遠く離れているからまるでよそ事なのか。僕の口から出る一つ一つの単語は、恐らく初耳に近いのではないか。昨年自分で情報を取りに行くようにすすめたが、所詮片棒を担ぎ続けたマスメディアの情報しか耳に届いていないのだろう。 どうでもいいような話が長いこと続いていた。僕は数人分の漢方薬をまだ作っていなかったから、その事が気になっていた。帰ってからクロネコの集荷時間までに間に合うようには思えなかった。でも、年に1回の父兄や学校関係者との話し合いだから忍耐強く待っていた。ところがとるに足らない話に終始した。 学校薬剤師という肩書きは、学校の環境を点検する職務を委任されている。昔と違って最近の学校は設備など著しく改善されたから、不備なところなどほとんど無い。ただ放射能に限って言えばどんなに手を尽くしても防御は出来ない。出来ることは口から入ってくるものを如何に少なくするかだけだ。時間が制約されていたから、超早口でまくし立てたが、いくつの言葉が耳に残り、僕の危機感がどれだけ心に残ってくれただろう。  折角西日本に住んでいて、魚や野菜や果物など地場のものが手に入ると言う環境にありながら、無関心故に東に住む人達よりも多く体内に放射性物質を取り込んでしまうと言う笑えぬことすらやってしまいそうだ。僕が神経質なのではない。一部の人間達の野心のために、多くのごく普通の人間達の財産や健康が損なわれて尚、何も知らされず被爆し続けている人達が哀れなだけなのだ。裁かれない巨悪が存続することを受け入れられないだけなのだ。