備前市

 別に当方の実力が伸びたのではない。ただ、薬局が、特に昔からあったような薬局がバタバタと店を閉めているから、自ずと商圏が広がり遠くから来て下さる人が増えただけだ。兵庫県との境にある市からも最近は来て下さる人が多くて、ブルーハイウェイを利用すれば30分で来れるらしい。以前は人づてに漢方薬について耳にした人のみが来てくれていたが、最近では特製の虫さされ軟膏や、風邪薬、わきがの薬などを求めてやってきてくれる人も多い。僅か650円の薬をわざわざ取りに来てくれたりするから、今や同じ町内感覚で備前市の人とも接することが出来る。 全くの偶然なのだが、先月のある日、朝から3人連続でその備前市の人だったことがある。漢方薬の相談の方ばかりだったのだが娘が全員応対した。そしてそれから2週間経ってからその3人がそれぞれ都合のよい日に来てくれた。一応全員よい効果が出ていてほっとしている。娘自身も安堵しているのではないか。近隣の方々だったら昔から僕をよく知っているが、備前市の人の場合、僕にこだわりはない。栄町ヤマト薬局に用事があるだけだ。それも治してもらえばそれでいいと言う、いたってシンプルなものだ。娘が応対することに何ら抵抗がないから、娘の出番が多くなる。僕は備前の方々に、娘夫婦を鍛えて貰えるのではないかと思っている。嘗て僕もそうだったが、来られる方一人一人に鍛えてもらった。  同じ瀬戸内海に面していることもあって、産業も似ているところもあって、応対するのに違和感はない。土着の人が多いのだろうか、心に余所行きを着る必要がない。あるがままを見せ合って、健康のお役に立てれるのが気持ちいい。一山越えれば関西弁の町で懸命に岡山の砦になっている・・・いやいやそんな気負いは微塵もない。買い物も病院も便利だから県境を越えて赤穂市に行く。何、どうして薬だけ僕の所に来てくれるのだ?