42年間

 番組の最後に「42年間有難うございました」と言うテレップが流れた。それを見て思わず苦笑してしまったが、超長寿番組にも、僕自身にもご苦労様と言いたい。 実際に42年見ていたかというとそれは自信がない。当初、僕の祖母が熱心に見ていたのだけは覚えているが、僕がその傍で見ていたかどうかは定かではない。ただ祖母はその番組をすこぶる楽しみにしていた。 僕が最初の出だしの場面さえ逃さないように見だしたのは、この10年くらいだろうか。出だしを見なければその後の内容がぼやけるから、とにかく出だしを大切にしていた。まさにツウの見方なのだ。おえんの入浴シーンなどがおじさん達に人気があったらしいが、僕はやはり悪が懲らしめられるところだ。そう言った当然のことが実世界で余りにも少ないので、水戸黄門を見て溜飲を勝手に下げていたのだ。ほとんどの悪役は代官と大店の商人と相場は決まっていて、退治の仕方も決まっているのだが、現代の肩書きと何ら変わりない悪人どもが観念する場面が痛快だったのだ。多くの視聴者も恐らくそこに共感して見続けていたのではないか。叶わぬ夢を重ね合わせていたのだと思う。  番組が、世の役人や大企業の巨悪がなくなったから終わるのなら歓迎すべきだが、寧ろそれらはますます増殖し、この国を覆い隠さんばかりだ。堂々と居直る力まで付けてきた。世界中に放射性物質をまき散らし、70億人の遺伝子を大なり小なり傷つけて、それでもまだ国から金を取ろうとしている。庶民が懸命に稼いで得た金が、税金という名の年貢であいつらに納められるのだ。なけなしの金が全国から集められ、犯罪者の元に届けられる。この理不尽を断罪しようとする機関はない。全て同じ穴の狢だから。  タイガーマスクが又ぞろ現れ始めたらしいが、出来れば沢山の光圀あたりも出てきて欲しい。