殿様

 何がなにやら分からないうちに、税金を始め色々なものが上がるらしい。取りやすい所から取るのが常套手段らしいが、今回は取りやすい時に取るという新手の常識も作られようとしている。そしてそのお金が、史上まれに見る犯罪を犯した会社を潰さないために使われるとなると、空しさも甚だしい。以前もこれからも、のうのうと高給を取り続ける奴らのためにどうして庶民が身を削らなければならないのだろう。怒らない庶民に怒る。 一体あいつらは「何様」のつもりだろう。常に経済や政治の中心にいた奴らにとって庶民は所詮「外様」だ。逆にその日その日を精一杯生きる庶民にとって奴らは所詮「よそ様」でしかない。もし庶民がもの申すようなことがあったら、彼らにとってそれは単なる「お邪魔様」でしかない。何らこたえないのだ。そんな「無様」な仕打ちに耐えながら遠くの方で「貴様」なんて吠えても届くはずがない。ビルの上の高級なソファーに腰を下ろして、下々を見下ろしながら余裕の「お疲れ様」ですまされるのがおちだ。  結局は何も変わらないのだ。とんでもない災害が起きても、とんでもない犯罪が起きても、何も変わらないのだ。狡猾は新たな触手を伸ばしている。不死鳥のようにどの時代にも繁殖するのだ。空しさをかみ殺して、目の前に現れた生き下手な人達との、束の間の心の往来をささやかな慰めとする。  社会という名の夜陰の向こうで肉食の目が光る。