今頃

 最後の言葉が「撃つな、撃つな」では、映画の中の小悪党の姿だ。悪党なら悪党らしく覚悟を決めて啖呵の一つでも切ったらいいと思うが、所詮小心者だったのだろう。だから権力構造を作り上げなければ安心して眠れなかったのだ。強がりの向こうに小心が透けて見える。 40数年、延べにしたら何千万人の人が奴の死を願っただろう。人生でいちばん幸せな日と表現している人もいた。どれだけの命を奪い、どれだけの冨を奪い、どれだけの自由を奪ったのか知らないが、兵士に一度撃たれるだけですむ犯罪ではない。何回殺されても償いきれない罪だ。かの国の人達の無念が多くの血と引き替えに晴らされた。銃声を鳴らし歓喜のステップを踏むのは勝ち取ったが故のものだからだ。およそこの国では見たことのない風景だ。奪い取るとか、勝ち取るとかが苦手な農耕民族とは雲泥の差がある。権力を欲しいままにした奴と良く似たものがこの国にもある。どれだけの命をこれから何十年も危険にさらし、どれだけの土地や家屋や職場を奪い、どれだけの自由を奪うのだろう。何回罪に問われ何十年服役しても償えないほどの大罪だ。この国が農耕民族だからこそ許されているが、狩猟民族の地で起こったことなら、今頃は・・・