柴咲コウ

 予告してこれ見よがしに行っていないから、彼女の映像はない。被災者が写したであろう写真があるだけだ。訪ねたのはボランティア過疎地だと言うからなかなかしっかりしているいる。  つい最近、織田裕二主演の「外交官黒田康作」と言う連続番組に婦人警察官役で出ていたが、そのちょっと力量不足気味を熱演して好感を持っていた。その彼女がマスコミに伏せて東北に炊き出しに行ったらしいのだが、実像との乖離に魅力を増す。ヨン様から始まって、果ては有名服屋のおじさんまで著名人の被災地詣でや、巨額の寄付にはそろそろ食傷気味だったから、売名を目的にしない彼女のさりげなさに余計好感が持てる。  都会からやって来た有名人が行列を作った被災者に料理を振る舞う。さんざん見せられた光景だが、ワイドショウの餌食かと思われる振る舞われる側の自尊心はどうなのだろう。何もかも失ったから恵んでもらわなければ仕方ないが、押し隠した屈辱感というものはないのだろうか。あの光景は見るに忍びない。あの津波さえなければ誰もがお情けを受ける立場の人ではなかったのだから。  どんな手があるのか僕には分からない。偉い人達が知恵を絞っているのだろうが、尊厳だけは守ってほしい。昨日までのごくごく普通の人達が、食べ物をもらうための行列をするのだから、自尊心という最後の拠り所だけは守ってほしい。