いびつ

 最近娘夫婦が作っている健康ブレンド茶が好評だ。先日も血圧の薬を飲むように医師に言われ続けていた人が、ブレンド茶で血圧が下がり喜んでいた。 今日は休みで年度末の棚卸しの準備を一人薬局に下りてやっていたら、ある看護師さんから電話がかかってきた。休みの日でも用事がある人は大歓迎だが、どんな緊急の用事があるのかと思ったら、例の健康茶が切れているらしい。この方に作っているお茶の内容はカルテに書き込んでくれていて僕にも作れるから、当然来店を促した。彼女がやってくるまでにそのお茶を作っておこうとカルテを見てみると、ダイエットと美容によいお茶と書いてあった。カルテの通りに作って待っていると程なくやって来た。非番でくつろいだ格好をしている。僕も暇だったので一緒にコーヒーを飲もうと提案したら喜んでくれた。  色々な話をしたが、おもむろにハンドバックから1枚の写真を取りだした。看護師さんの送迎会の時の写真らしくて本人を挟んで3人が写っている。僕とは何の関係もないその写真を見せてくれたのには訳がある。両脇の同僚に比べて圧倒的に輝いているのだ。その事を言いたかったのだ。送迎会の時、「○○さんの肌はぴかぴかじゃなぁ」と皆で褒めてくれたらしいのだ。確かに両脇の人と同年輩には見えなかったが、肌が光っているかどうかまでは写真では分からない。僕には明らかに表情は光っているように見えたのだが。「今でもずっとエステに通っているけれど、こんなにつるつるになったことはないわ」もうお子さんが働いているような年齢になっても「つるつる」は嬉しいのだろう。そう言えばシミの飲み薬や塗り薬も買ってくれているから、かなりの投資をしてくれていることになる。巷言われる「美と健康」の美の方は苦手な僕だが、若い2人がかなりの部分をこなしてくれるようになって、そちらの方の相談も増えているのかもしれない。  「それだけ元気になって、綺麗になったのだから、いつ東北に救援に行くの?」と尋ねたら「行くもんか、私が倒れるわ」と大きく手を振っていた。「お医者さんはもう行っているのではないの?」と尋ねると「うちの病院は年寄りばかりの医者だから行くもんですか」とこれも又大きな声で笑いながら答えた。確かにそうだ、医師も看護師も体力がないと自分が参ってしまうだろう。ボランティアも体力勝負なのだ。「でも私なんか一番派遣されやすいかもしれないね、子供が大きくなっているから」  ふとした会話もやがてその話題になる。夕方海岸線を散歩したら、自然に海面と堤防の高さを測っている自分がいた。穏やかな波の音にも恐怖する、いびつな夕暮れ時だった。