噴火

 アイリスと言うから、収納用品のメーカーか目薬かと思っていたら、どうやら人気のある花らしい。花を買った経験がないから、花が当たり前のように外国から空輸されていることなども勿論知らなかった。花くらい日本で調達できるのではと思うのは、およそその世界とは縁遠い田舎人の発想だろうか。確かに野山では見かけない綺麗な花が一杯店先には並んでいるが、飛行機で運ばれてくるとは想像できなかった。あの花たちのためにどのくらいの経費がかかっているのか、それこそ「空」恐ろしくなる。 花だけではない。アイスランドの火山の噴火で飛行機が飛べなくなって、結構色々な分野で影響が出ているらしい。回転寿司のサーモンやイタリアのなんとかと言うチーズなどはどうでもいいが、緊急を要する医薬品や移植のための臓器などとなると重大な懸念だ。今はどの業種も最低の在庫で効率重視で運営しているから、予備を余り在庫していない。だからこんな不測の事態が起これば瞬く間に、ネットワークが遮断され行き詰まってしまう。  面白かったのは、多くの旅行客が、日本人も外国人も同じように、早く家に帰りたいと言っていたことだ。家に帰りたいくらいなら行かなければいいと思うのだが、何かぴんと来ないコメントを聞いているような気がした。家にいたくないから出かけていったのに、家に帰れないとなると、早く家に帰りたいと言う。おまけにもうお金がないから、空港から何処にも行くことが出来ないとも言う。そんなにぎりぎりの財布で旅行をしていたのかと思うとなんとも頼りないが、そこが生命力の差だろう。  火山一つでこんなに混乱するのかと、科学が発達したばかりの災難に驚かされる。そして世界中で人がこんなに行き来していることにも驚かされる。こんなに人が混在して生きていく時代は、敵も味方もなくなり、誰もが隣人になり得る。今もまだ戦いは局地的に起こっているが、いずればかげた戦いは存在しえないだろうなと、そんなことを期待させる光景でもある。 ああ、僕の冷めた心も時には噴火して、日常に覆い被さっている氷河を溶かしてみたい。