下手な小説よりも面白かったし、下手なテレビ番組よりも面白かった。日本薬剤師会から送られてきた国民の声を読んでの感想だ。声というよりクレームばかりだったが、なかなか参考になるケースが多かった。詳細は同業者としてとても恥ずかしくて言えないようなことばかりなので省くが、結構薬局も患者さんもお互い強い。各々の事例が何処であったことか分からないからなんとも言えないが、どちらかと言えば都会的なトラブルが多いように思った。ぎすぎすしてお互い大変で、どちらも精神的な加害者であり被害者でもある。お互いが見ず知らずの関係ならこのような態度もとれるのだろうなと想像できる。家族まで知っていたり、あるいは色々な地域のつながりを持っていたらここまでお互いに口には出さないだろうと言うことばかりだった。  現在、薬剤師会では僕みたいな昔ながらの薬局はほとんど蚊帳の外だから、ほぼ調剤薬局に話題は集中していたが、調剤薬局は経済的に勢いがあるから患者さんにも結構強く出れるのだと思う。なかなか経済的な裏付けがないとあそこまで高圧的にはなれないだろう。僕らは自分でコツコツとそれこそ何十年もかけて掴んだ人間関係だから、どちらが上でどちらが下の関係はない。それこそ対等なのだ。威張りもせず、媚びもせず同じ緑色をした空気を吸っている。 朝、テレビのスイッチを入れれば誰かが誰かの悪口を言っている。新聞を開けば誰かの批判が盛りだくさん。いつからこんなに他者を責めることばかりが闊歩しだしたのだろう。他者を批判するのは余程自分を律しないと恥ずかしくて出来ないと思うのだけれど、その辺は都合良く我関せずだ。その程度の人間でないと口を開けば悪口ばかりなどの商売は出来ないのかもしれないが。自分を棚に上げるというのは、かなりの厚かましさがないと出来ない芸当だが、そんな輩が異常なスピードで増殖している。  かみつけば金になり許せば一文の得にもならない。だが得はいくつ積んでも徳には届かない。形あるものが形のないものに勝てるはずがない。