垂れ流し

 名前を聞いたことがない薬の会社から、はち切れそうに内容物を詰めた封筒が届いた。開けてみるとフリーズドライ形式の数種類のスープが入っていた。取り扱いを勧誘する文章と共に。何処の家庭でも恐らく時々は利用するありふれたものだから何で薬局にと思ったが、理由はすぐに分かった。カレースープとかおみそ汁とかの文字より倍以上大きな字で健康サプリと表示されていた。そしてその下にはコラーゲンとかヒアルロン酸とかコンドロイチンとかの最近流行りの成分名が載っていた。美味しそうな写真と共に。1個が200円するそうだ。僕はほとんど食品などの買い物をしたことがないから、この値段が高いのか安いのか、はたまた適正なのか良く分からない。ただ、卵スープを家庭で作っても200円はしないだろうなと言うことは想像できる。卵くらいの値段はわかるから。ミネストローネという名前は初耳だから分からない。格好いい名前だからこれは高いか。 興味を持ったのはサプリもここまで来たかってことだ。瓶に入れられ薬のような形状にしていれば、何となく効果を期待して購買に結びついてきた。それでもさすがに意味を成さないことを購買者が学習してきたから、一時の勢いはなくなったらしい。一部のマニアは垂れ流し気味の製品を追っかけているが、不景気が幸いしてか「健康は自然にとれたものから命を頂くもの」に回帰し始めている。手を加えれば加えるほど自然から遠ざかり、それをもって自然食品と呼ぶのは抵抗がある。ずっと言い続けたことだが、本当の健康食品は今日も田舎の畑で腰の曲がったおじいちゃんやおばあちゃんが育てているし、太陽に長年焼かれ深いしわを作った漁師達が一人海の上で獲っている。自然の命を頂かずにしてどうして人間が健康でおれようか。 しまった、こんなえらそうなことを言わなければ良かった。今家族で試食したら結構美味しかった。これなら毎日数種類をローテーションすれば飽かずに飲める。家で作ったものより美味しいかもしれない。膝や腰が治れば一挙両得だ。レシチンが入っているのもあるから脂肪も落ちるかもしれない。ああ、いいことづくめだ。僕の精神の方が垂れ流し気味になってきた。