平均値

 何とも切ない統計だ。07年度の1世帯あたりの平均所得が新聞に載っていたのだが、平均値が556万円でそれがいいのか悪いのかは別として、所得の分布状況の方が気になった。200万円以下が20%近く、200~400万円が25%近く、これにほぼ半数の世帯が入ってしまう。恐らく年金や税金などを引かれたら相当目減りして、可処分所得となるとかなり少ないのではないか。現在の暮らし向きをどう感じているかとの問いに6割近くの人が苦しいと答えているのでそれが想像つく。  僕の薬局を利用してくれている人は、この範疇に入っている人が多いのではないかと思う。田舎だから元々収入はそんなには多くないが、その収入の中から薬代に回してくれている人が多いのだ。身が引き締まる思いとはこんな時に使ってもいい言葉なのだろうか。身が引き締まった経験がないから分からないが、緊張感はある。捻出してくれた金額に見合う仕事が出来てお返しが足りているのかどうか常に検証しなくてはならない。効かないでは申し訳ない。実力不足で、又過大な評価を頂いて結果を残せないことはしばしばだ。 幸運にも、何でも出来るような錯覚に一度も陥ったことがないから、謙虚ではあり得たが、年齢と共に目の前に見える壁が成長する。それを越そうとする気力体力は無いから、壁は何時までも壁であり続ける。得意の迂回も、先回りした失念に待ち伏せられ足踏みをただ繰り返すだけ。平均値をぐっと引き上げる経済的実力者とは縁遠いから、せめてこの世界の実力者から学びたいが、謙遜なその人達の口は重く、僕を平均値まではなかなか引き上げてはくれない。お金で買えない平均値が雄々しく立ちはだかる。